がん 余生を施設で過ごすことを選んだ方についての記録 ④好きなものを食べるために検討したこと。
特定施設でケアマネをしています。
急遽入居が決まった方です。
胃がんステージⅢaと診断。がんに対しては積極的な治療を行わないと決め、自宅で生活されていました。
誤嚥性肺炎と過活動性膀胱炎、胸部痛があり、ご自宅から救急搬送。病院で治療をされていましたが、状態安定したのていつでも退院ができると言われたそうです。
高齢の夫と二人暮し。ずっと二人で寄り添って生きてきました。
がんが判明し、ご自宅で二人で頑張ってきたけれど、介護量が増えたことで夫の負担が増し、在宅生活に限界を感じて、施設を探されていたとのこと。
ご縁あって、私共の施設へ入居をお決めになり、退院されてご入居されました。
がん終末期で、自宅ではなく施設で残りの時間を生活することを決めた方に対して、
どのように関わり、生活をサポートしていくか。日々のケアを記録していきます。
経緯はこちら↓
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入居して10日。
毎日痛みが出現します。そのたびに痛みスケールを使用し、痛みの程度を確認し、
看護師へ報告。医師の指示の麻薬を使用しています。
身体の痛み=骨転移したがんの痛み=がありますが、ここ3日間くらいは呼吸苦はなく過ごされています。
しかし、時間がわからなくなったり(見当識障害)、夢を現実のように思えたり、食事を食べていない、という認知症的な発言が見られるようになりました。医師の見解では、「麻薬性のせん妄」とのことです。
せん妄とは、貧血、肝・腎機能障害、栄養障害、電解質異常、低酸素、感染症、薬物の影響といった身体的な原因によって、意識が混濁し、興奮状態になったり、幻覚、妄想が出たりするなどさまざまな症状が出る様子のことです。今回はがんによる疼痛を改善するために使用している麻薬によるものとのことでした。発言が認知症の方と似ていることから、施設介護士からの最初の報告では、「認知症的な症状が出た!」との内容でした。しかし、そうではなくがんによる身体的な原因と、麻薬によるせん妄とであると判明。お話を聴く、安心できる声掛けをする、寄り添うなどの対応にて、せん妄は続いていますが、大きな混乱なく生活されています。
正しい知識と適切な対応が必要だと感じました。
言語聴覚士による嚥下評価の実施
食事形態の変更について、言語聴覚士による嚥下評価を実施しました。
<目的>
①生活の質を向上するために、食事の形態変更を検討する。ソフト食→刻み食へ。
②美味しいと思える食事、間食を摂取する。
③食事が楽しみになるように。
<ご本人が食べたいと話された食品>
・果物 →りんご、ぶどう、スイカ、バナナなど
・パン →サンドイッチ、クルミパン
・果肉や固形ゼリー入りのヨーグルト・ゼリー
<評価食品>
ご本人がお好きな食品・果物(上記)
施設の食事 ①ソフト食・ゼリー粥(現在の食事)
②きざみ食・全粥
<評価結果>
言語聴覚士、看護師の見解
・自歯があり、そしゃく力は良好
・ソフト食→きざみ食への形態変更は可能
・しかし、のどに詰まる様子や咳が見られる。肺がんにより同様な症状があり、
現段階では誤嚥なのか、肺がんによる症状なのかの判別がしにくい。
病状を考慮すると、好きなものを食べるのは【今】である。
↓
嚥下評価にてクルミ入りパンと果肉や固形ゼリー入りのヨーグルト・ゼリーはNG。
それ以外は好きなものを摂取する。
施設の食事はきざみ食・全粥へ変更する。
食事形態を変更して、痰が増量する、吸引が必要になるなどの状況が見られたら、主治医と相談していくこととなりました。
ご本人様は笑顔で「嬉しい(^^♪」と話されました。
「美味しい美味しい。久しぶりに食べました。」と本当に嬉しそう。
結果をご主人へ伝えると、ご主人も大変喜ばれていました。
「いろいろ持ってくる楽しみができました。」
本当に良かったです。素早く多職種で検討して、対応ができて本当に良かった。
今日からの食事が、どうか楽しみとなりますように。
ご主人と一緒に好きな食事を楽しめますように。
がん末期で余命いくばくかという状況の中、生活の質をいかに高め、
残された時間を穏やかに過ごし、したいと思うことを行い、「今」を悔いなく生きる
ために支援しよう!
安全も考慮しながら、その思いを叶えるために、どのように支援していくか。
リスクも併せて説明しながら、思いを叶えていく支援をしていきたいと思います。