高齢者施設での生活~もやもやする入居者様の思い。自分のペースで生活するために、私たちができること。
特定施設でケアマネをしています。
私が勤める施設は、24時間看護師が配置されている医療対応に特色を持っています。
入居者の平均介護度は要介護3.8。医療度が高く、介護の必要な方が入居されます。
その中でほぼ自立の方も3名生活されています。先日、ケアプラン更新のため、自立のお二人の方にお話しを伺いました。
要介護度が低い、介護があまり必要のない方の施設生活について、考える機会となりました。
「悩みがあるのよ。」
先日、Aさんが話していたとスタッフから聞きました。その時は詳しい内容は話されなかったとのこと。
とても気になって、ゆっくり時間を取れる日に面談しました。
Aさんは90歳まで、自宅で一人暮らしをしていました。
「自分でできることをして、自分のペースで自由に暮らしたいの。」と希望。
一人暮らしを心配する娘様の思いを心に留めながらも、帰宅で生活していました。
介護保険のサービスも利用されずに、頑張っていました。
そんな中、自宅で脳梗塞を発症し倒れてたのです。
幸い発見が早くすぐに治療ができたこと、努力家で頑張り屋さんという性格でリハビリを頑張り、軽度の左片麻痺があるものの、少しのお手伝いがあれば生活できるまで回復。歩行器で歩行もできます。伝い歩きしながらトイレまで移動できます。
ただ、自宅での一人の生活は難しいと娘様が判断。Aさんと話し合いを重ね、Aさんも同意してリハビリ病院から私たちの施設へ入居となったという経緯をお持ちです。
入居後は食事や掃除などはスタッフに任せ、その他の生活はAさんがご自身のペースでできることを行い、自由に過ごしていました。施設の日課や行事に積極的に参加し、他の入居者とも良好な関係を築き、スタッフとの会話も楽しまれていました。
ご自身のペースで過ごしているかのように見えていました。
面談してお話を伺い、そうではないのだ、ということに私が気づいたのです。
「昼のテレビで見たいニュース番組があるの。でもここのお昼ごはんは12時からでしょ。時間がかぶさっているから、見られないの。」
「寝る前の薬は21時半頃に飲みたいけど、木曜日は好きなドラマがあるから、中断したくないの。」
Aさんの気持ちはこうです。
・施設の日課にはできるだけ合わせたいけど、合わせると好きなことができなくなるので、もやもやしている。
・職員へ希望を伝えればいいのかもしれないけど、皆に迷惑をかけてしまうと思うと申し訳なくて希望を伝えられない。
・職員は一斉に食事して片付けして、次の仕事をしたいと思っている。
・いつも職員が忙しそうで、声をかけられない。
そんな風に気を遣い、我慢されていたのか・・・。
私たちは今までAさんの何を見て、何を話してきたのだろう。
何をしていたのだろう。
私たちの施設には日課があります。
でもそれは絶対ではく、あくまでも目安。運動や趣味活動の時間、午前午後の水分補給の時間は決まっていますが、起床・就寝・食事時間等は、入居者一人ひとりのペースで生活できると謳っています。
しかし現実は、施設の生活リズムに、入居者の生活リズムを合わせているのです。
やっぱりそれは違うと思います。
どのような状況でも、その人の生活の主役はその人自身です。
施設生活という集団生活では、全く自宅と同じように自由に気楽に過ごすことは難しいと思います。多少は合わせたり、気遣いする場面もあるでしょう。
そうであっても、施設生活は自分の生活の場所。
見たい番組、読みたい本・新聞、自分のやりたいことを好きな時間にすることを妨げられる、我慢しなければならない必要はないと思います。
「見たいTVがあるから、今日の昼食は1時間遅くして」と、気軽に職員へ伝えられるために。
そういう希望が気軽に言えるように、私たち職員が雰囲気を作っていくこと。
業務ありきではなく、入居者それぞれの生活リズムを尊重すること。
入居者の生活リズムに施設が合わせるという気持ちを持つこと。
忙しくても忙しいという雰囲気を出さないような気づかいをもってふるまうこと。
日頃のコミュニケーションを通じて、信頼関係を築くこと。
何より【その方を知ること】。
日頃の仕事に忙殺されてしまいがちな頭を、ハンマーで殴られた感じでした。
私もケアマネとして今までAさんの何を聞いていたのだろうか。反省です。
自分だったらどう思うだろうか。
想像力を働かせて、こちらから入居者の思いを感じ取る。
希望を本音を聴く、引き出すコミュニケーション。
信頼関係。
私に話してくれたことを感謝し、施設の改善課題としたい。
皆で話し合う場を設けたいと思います。