ワーママ・ケアマネたきぼんの介護・子育て

ケアマネたきぼんのこころが軽くなる介護・子育て・生活のヒント

がん 余生を施設で過ごすことを選んだ方についての記録 ⑥屋上テラスで花火と旅立ち

特定施設でケアマネをしています。

 

急遽入居が決まった方です。

胃がんステージⅢaと診断。がんに対しては積極的な治療を行わないと決め、自宅で生活されていました。

誤嚥性肺炎と過活動性膀胱炎、胸部痛があり、ご自宅から救急搬送。病院で治療をされていましたが、状態安定したのていつでも退院ができると言われたそうです。

 

高齢の夫と二人暮し。ずっと二人で寄り添って生きてきました。

がんが判明し、ご自宅で二人で頑張ってきたけれど、介護量が増えたことで夫の負担が増し、在宅生活に限界を感じて、施設を探されていたとのこと。

 

ご縁あって、私共の施設へ入居をお決めになり、退院されてご入居されました。

がん終末期で、自宅ではなく施設で残りの時間を生活することを決めた方に対して、

どのように関わり、生活をサポートしていくか。日々のケアを記録していきます。

 

経緯はこちら↓

 

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8月になりました。

入居して25日。

 毎日痛みが出現します。そのたびに痛みスケールを使用し、痛みの程度を確認し、

看護師へ報告。医師の指示の麻薬を使用しています。

身体の痛み=骨転移したがんの痛み=があります。血中の酸素飽和度も上がりにくくなりました。血圧も低めで推移しています。

 

<体調の経過>

 

1週間前の在宅酸素が開始されてから、呼吸苦が多く見られるようになりました。

7.26 在宅酸素1L/分開始

   会いたかったお孫様も来訪。手紙や写真、絵を持ってきてくださり、お部屋に

   飾る。

7.27 状態は一段階落ちた様子。苦しさはないとのこと。良かった。

   口腔内に白いカビ様のものが付着。往診の結果カンジタとのこと。

   免疫力低下により、常在菌が悪さをしていることが原因。軟膏開始。

7.29 呼吸苦が強くなり、在宅酸素2L/分へ増量。しかし、血中酸素飽和度が92%

   から上がらず、3L/分へ変更して様子を見ています。

   肺に転移した病巣が影響して酸素を充分に取り込めない状況。

7.30 呼吸苦が継続。酸素飽和度は89~92%。苦しそう。痰をご自身で出せず、

  「苦しい」と。看護師が吸引を提案したが、「苦しいから吸引はしたくない。」と

  ご自身で客痰することを選らぶ。

 *吸引はカテーテルを喉から入れる、鼻から入れるとの二つの方法があります。

  どちらの方法でも、カテーテルを入れる痛み、吸引動作がとても苦痛が伴う処置。

  私は経験したことはありませんが、とても嫌な処置だとのことです。

8.1 呼吸苦が継続。医師の指示にて、在宅酸素5L/分へ変更。

8.3 スタッフとの会話で花火の話題になる。「花火がしたいな」とご本人様。

  「ぜひ、今晩やりましょう!」と二人のスタッフが準備に手を挙げる。企画して

  くれました(*´▽`*)。昼休みに花火を買いに出かけ、ご主人様へ連絡。都合のつく

  ご家族様をお連れして来訪をお願いしました。ご主人様も快諾!!

  屋上テラスに花火会場を設置。ご本人様、ご家族様とスタッフ、施設長、看護師、

  私、夕涼みしていた他の入居者様数人が集合。線香花火や手持ち花火を10種類程

  楽しみました。キラキラ輝く花火の光、とても美しかったです。ご本人様もご家族

  様も、本当に楽しそう。いい笑顔。素敵な時間を過ごすことができました。

8.4 主治医往診。苦しさ、痛みが強くなり、先生へ「こんなに苦しいのなら、もう死に

  たい。」と辛い心境を伝える。

  主治医は麻薬を変更することを指示。麻薬を強くし、もう少しふんわりと傾眠する

  方向に招請するとのこと。「意識がしっかりしている状態で、今のがんの疼痛は

  ご本人にとって相当な苦痛となるので。」とご主人へ説明。ご家族様も同意され

  る。苦しい、辛い、死にたいと口にするご本人様をそばで看るのはご主人様もお辛

  い思いだったと思います( ノД`)。

8.6 フラダンスを鑑賞する。

  痛みがなく、体調が安定している時間を見て、ボランティアさんによるフラダンス

  を鑑賞していただく。ご本人様のお部屋でワンマンショー。スタッフも同席し、

  手拍子で盛り上げる。笑顔で「すてきね~」と鑑賞された。

8.9 午後から酸素飽和度が低下、血圧も70台以下となる。酸素を増量しても酸素飽和

  度も上がらない状態。肩呼吸へ移行、呼びかけにも反応が少なくなる。主治医は 

  「あと数時間でしょう。」との見解。

  16時 酸素飽和度44%に低下。ぼんやりと寝ているようなご様子。 

  ご家族をお呼びする。ご主人は施設へ宿泊し、一緒に過ごしました。

 

8.10 ご逝去。

  5時 呼吸状態に変化。努力呼吸となる。

  7時 心停止

  8時 医師が死亡確認

  ご家族様に囲まれ、最期の瞬間に眼を開き、みんなを見て。安心されたように、

  ゆっくり目を閉じ、呼吸が停止された。まるで眠るように安やかな最期でした。

   

 ご入居されて1か月。天国へと旅立たれました。合掌。

 ご冥福をお祈りします。

 

ご主人様からいただいたお言葉。

「ここの施設で最期の時間を過ごせて、本当に良かったです。自宅で自分一人で看病していたらきっと大変で、こんなに心に余裕をもって本人に接することはできなかったかもしれません。ゆっくりお部屋で家族で過ごせたこと。面会制限なく思い残すことなく一緒に過ごせることができました。特に、この新型コロナ禍で、本人が一度口にした

『花火がしたいな』という願いを叶えてくれた。本当にいい思い出になりました。

ありがとうございました。」

 

お気持ちを伺い、泣きそうでした。

 

食べたいものを楽しみ、してみたいことを知って実現できたこと。

大切な支援で、大事なことだった。本当に良かった。

 

1か月という短い施設での生活でしたが、ご家族様もご本人様も安心して過ごすことができ、ご家族との時間をゆっくり大切に過ごしたこと、ご本人様の希望をできるだけ

実現できるようにスタッフが動いたこと。施設でのお看取り支援の力の見せ所だったと思います。皆が「〇〇さんのために。」とタイムリーに行動したことが、見送る私たちも後悔が少なく支援できたのではないか、精一杯よい時間を過ごせるように支援できたのではないか、と考えます。

 

後日、施設内で今回のお看取りケアについてしっかり振り返りを行います。

 

良かったこと、もっとこうしたほうが良かったことなど、本音で話し合い、

また次にご縁があるお看取りのケアへ生かしていきたいと思います。 

 

お看取りという余命いくばくかという状況の中、生活の質をいかに高め、

残された時間を穏やかに過ごし、したいと思うことを行い、

「今」を悔いなく生きるための支援を行うために。

 

とても学びのある看取りケアでした。

私たちの施設を選んでくださり、ありがとうございました。

一緒に過ごすことができ、私たちも光栄でした。

ご冥福をお祈りいたします。