ワーママ・ケアマネたきぼんの介護・子育て

ケアマネたきぼんのこころが軽くなる介護・子育て・生活のヒント

高齢者施設を選ぶときの心構え ~60代男性の相談を受けて~

私は介護保険による「特定施設」と認定されている、介護付き有料老人ホームで

ケアマネージャーをしています。

 

今日、入居相談と見学の問い合わせがありました。

有料老人ホーム紹介センターの営業の方からです。

施設長、相談員、看護師とケアマネの私とで話し合いしました。

 

最初の問い合わせの時点では、情報が少ないことが多いです。

ぱっと聞いた情報では、特に問題となる内容はない。

しかし、よくよく情報を確認することが必要です。最初に聞いていた情報での印象と、

具体的に細かく確認した情報での印象が、異なることがあるからです。

施設側として、「入居されてから施設で対応できなかった」、

入居者側として「こんなはずではなかった」、では済まされません。

 

一生を左右するといっていいほど、大切な老人ホーム選び。

万が一ミスマッチな選択をしてしまうと、ずっと不満や不自由を感じながら生活していくことにもなりかねません。それは本当にストレスです。意欲の低下にも繋がります。

いかに入居前に、当人と施設がお互いの情報を知り、受け入れられるか、その施設で

生活できるかとの綿密な検討が必要です。

一度しかない人生、悔やむことなく生きていくために。

 

今回の相談内容

・60代男性

・疾患:悪性リンパ腫

・状態:嚥下障害、胃ろうによる栄養補給、吸引が必要

・相談内容

悪性リンパ腫が判明、治療して退院。

退院後、誤嚥性肺炎にて再入院。経口摂取を希望して、リハビリ病院へ転院するも、

嚥下状態改善せず、胃ろうを選択。

胃ろう造設のため入院、現在はリハビリ病院にてリハビリ中。

退院時期となったが、自宅での生活は困難とのことで、入居施設を探している。

 

施設多職種での検討

情報が少ない中で、受け入れができるのか検討しました。

経管栄養、吸引対応という医療処置のみで考えると、受け入れは可能そうです。

懸念点と確認が必要な事項をピックアップ。

次回施設見学の際に、施設長と相談員が情報詳細を確認していくことになりました。

 

①疾病の状態について情報がない。

・現疾病の状態と治療内容、今後の治療方針、予後はどうか?

・お看取りの状態なのか、疾病と共に生活していく状況なのか。

・既往症は?

・リハビリ病院入院中。リハビリの目的、ゴールはどこを目指しているのか。

 

日常生活動作の能力について情報がない。

・ご本人様の全体像がこの時点ではわからない。

日常生活動作はどの程度ご自身で可能で、介助が必要な部分はどこか。

 

③年齢が60代後半、男性であること。 

老人ホームは入居者さんの年齢層は高く、女性の入居者が8割位を占めています。

私の職場の施設でも平均年齢85歳、平均要介護度3.5です。ほぼ8割が女性です。

60代であれば、ご自身の親御さんと同年齢か、それ以上の高齢の方との集団生活となります。提供している体操やレクリエーション等は、基本的には高齢者に合わせた内容であり、お若い男性への個別の対応はできにくいのが現状です。

・高齢者の住まいについて、どのくらい情報を持っているのか。

・老人ホームでどのように生活したいのか。

・老人ホームでの生活のイメージができているか。

・私たちの施設がご本人様の生活を支えるためにできること、できないことはなにか?

 

今回、お話をいただいた方は、入居を決まる前にしっかりと情報確認と情報提供の上、お互いの目線を合わせることの必要性を感じました。

施設見学の際に、施設長と相談員が丁寧にお話をしていくことになりました。

 

施設での生活をイメージしていただくこと。

ご自身の今後の生活の希望(どんなふうに生活していきたいか)が、この施設で実現できそうか、考えていただくこと。

そして私たちの施設が、60代男性の入居者へ支援できることとできないことを説明すること。

 

高齢者入居施設を選ぶときの視点

退院を迫られている、自宅での介護が難しくなった、一人暮らしが困難になった等、

施設入居を検討するきっかけがあると思います。

そういうときは、急ぐ必要がある場合が殆どです。

「2週間以内に退院してといわれて困っている」など、本当によくあるケースです。

待機者が多く、申し込みの要件がある公的な高齢者施設である特別養護老人ホームは、選択肢から外れます。

では、どういう施設がいいのか。

数多ある施設の中から、個人で選び出すのは至難の業です。

 

<情報収集先>

入院中であれば病院の相談員(メディカルソーシャルワーカー)、在宅であればケアマネージャーや地域包括支援センターの相談員への相談をお勧めします。

また、有料老人ホーム紹介する業者やインターネットでの検索でも情報を得られます。

 

まずは、情報を得ましょう。どういう種類の施設があり、その特徴を知ること。

 

そして、自分が、親が、配偶者が、施設でどのように生活したいか、その希望が叶えられそうな施設はどこか、という視点を持ってほしいです。

 

<見学>

気になる施設があったら、見学しましょう。入居するご本人も一緒に見ることが大切です。雰囲気や職員の印象、設備や装飾、においなど、実際に足を運ぶと気づきがあります。「ここは合いそう」「少し違うかな」など、体で感じることができます。

 

<体験利用>

もしできれば、体験利用してみることをお勧めします。どこの施設も、1泊2日~6泊7日まで、体験宿泊ができます。

丸一日生活することで、その施設での日課や他の入居者の状況、食事内容、施設設備が体験できます。施設での自分の生活イメージが湧き、自分や家族に合うかどうかが体感できるでしょう。

 

ご本人の状況によって、適切な住まいがあります。

一つの施設に絞らず、種類の異なる施設を調べて、見学して、ご自身の生活に合う施設を選択してほしいと思います。

施設入居のメリット・デメリットをしっかり知ったうえでの選択をしてほしい。

入居の相談を受ける際に、いつもいつも思います。

 

適切な施設を選ぶために、親御さんや自分が元気なうちに『老後の住まい』について

考えておくことが大切です。終活やAPC(人生会議)が話題になっていますが、

今の時点でどのように暮らしたいか、病気になったらどう暮らしたいか、など、

普段から家族と話題にし、意向を伝えたり、施設の情報を調べて置いたりすること。

もしもの時に、慌てずに進む方向を選択できると思います。

 

私の母が脳出血で倒れた時、本当に大変な思いをしました。住まいをどうするのか。

何も考えていなかったから、充分に母の希望を聞くことはできず、充分に比較検討できず、時間に追われ決めてしまったという状況でした。

もう少し、以前から考えていたら・・・。後悔すでに遅しでした。

そうなったらどんどん決めて進めていかなければなりません。ベストな選択はできなかったし、ベターでもなかったかもしれません。でも、その時の状況では「ベター」な選択だったと、今は思うようにしています。

 

事前の情報収集と、意向の確認。老後の生活をどのように送りたいか。

日常から考えていくことが大切です。